公開日:2016年11月20日日曜日

小説の初心者がプロになるまでの段階を表した「ワナビの発達課題」を作ってみた


 小説を書く練習を、4つのステップに分けてみました。執筆の手助けになれば幸いです。

ワナビの発達課題



クロスグリ・ワーナビー[Crosgre Warnaby]
(2012~ ツイッター)

 クロスグリ・ワーナビーは「小説創作における技術的発達は、ある一定の法則に従って段階を踏まなければならない」と提唱した、精神分析家……ではなく哲学者……でもない、ただの作家志望である。フィンセント・ファン・ゴッホに似ているのは気のせいだ。

 人が初めて小説を書いてから、売れっ子作家になるまでの過程を4段階に分け、それぞれのステップに適した課題を設定。そうして出来上がった「ワナビの発達課題」は作家志望たちを震撼させ、世に普及されていくことに(なるといいなぁ)。

 以下が「ワナビの発達課題」の詳細である。初めて小説を書く段階から、順を追って説明しよう。

誕生期 ―小説の書き方も知らない時期―


 何かしらの小説を読んで、「俺も小説を書いてみるか!」と思い立って筆を執る時期。

 創作の良し悪しが分からないため、書いては自画自賛を繰り返す傾向がある。もちろん作品としての完成度は低いが、誰も指摘せず褒めてくれる。書くたびに自己有能感を覚えるので、全ての発達課題のなかで1番幸せな状態と言える。

 創作の楽しさを見出すのが1番重要。モチベーションが続けば自然に、次の発達課題へと進むだろう。

心理療法としての小説


 小説を書くということは、時として自分の深層心理を描くものである。人には話しづらい物事はもちろん、言語化しづらい不安・心の傷を芸術として表現することで、気持ちが楽になっていくのだ。これは心理学用語で「アートセラピー」と呼ばれている。本を読む時も同様の効果が得られる。


 アートセラピーは、自分自身の内面を掘り下げる作業だ。自分のことばかり考えて書いたものだから、出来上がった作品は読むに堪えない代物であることが多い。しかし、「貴方らしさ」を探すのには有効な練習方法であるため、今後のオリジナリティへ繋げるべく一度は試してみるのをオススメする。

コミュニケーションツールとしての小説


 インターネット上で作品を公開すると、大なり小なりの反応が出てくる。そこで創作仲間が生まれて、創作行為に対する報酬効果を獲得できる。「創作をすれば相手にされる」という承認欲求を満たすようになり、親和欲求へとつながっていく。

 本来孤独である物書きは、他人からどう見られているのかなかなか気づけない。感想をくれる人を作るのは、今後のステップアップに大きな助けになる。また、自分と他者を比較するために、近くにいる人の作品を読むことも大事だ。

他人のモノマネをする


 素人は得てしてオリジナルを作りたがるが、何事も基盤がないと完成にすら到達しない。基礎は、他人のモノマネから形成していくものだ。そこから他人の骨格を盗み取り、創作のやり方を学んでいくのがセオリーとなる。

 出来るだけ多くの作品を真似するほうが良いにきまっているが、最初のうちは多くの作家をブレンドするのは避けたほうがいいだろう。何を意識すれば良いのかわからなくなり、しっちゃかめっちゃかになる可能性があるからだ。

収集期 ―小説の基本のキを習得する時期―


 自作品が低クオリティであることに気づく時期。

 書籍やインターネット等で技術的な理論を勉強し、創作活動に反映させようと試みる。多くの場合、「コンプレックスからの脱却」が原動力であり、憧れの作家との差を自覚している人ほど収集期が長くなる。創作に関して多感になり、他人からの評価内容を気にする傾向がある。

 コンプレックスが大きすぎても、小さすぎても成長を妨げる要因となるため、脱落者が多い。ワナビ発達課題における第一の闇と(個人的には)呼んでいる。

読みやすい文章を心がける


 収集期における最大の課題は、「自分の文章は、綺麗な日本語ではない」と自覚し、読みやすい文章を心がけることだ。日本語文法や文章作法、論理性のある(話が飛ばない)文章に気を配り、二重否定や二重表現などを極力減らしていく。いつも日本語を使っているから勘違いしがちだが、きちんとした日本語を書くには、多大な努力が必要となる。

 読みやすい文章を作るのは勉強的(いかに間違えないか)で、創造性とは直接結びつかない作業である。いきなりレトリックや描写から文章表現を考える人も多いが、それらの高等技術は「実際に読まれるようになってから意識する」ことである。アート的な文章を書けても、伝わる努力をしていなかったら意味がない。

物語の基礎構造を覚える


 小説を書きなれない人は得てして、書きたいシーンだけを書くことしか考えない。自由気ままに物語を書いていては論理性の欠けた作品になってしまい、読者が気持ちよく読み進めることができない。三幕構成や起承転結などを学んで、物語の基礎構造――各シーンの、配置の仕方――を身につける必要が出てくる。

 論理性のある物語というのは、全てのシーンが繋がっていることである。なにも難しい話ではない。「Aが起きたから、Bが起きた。Bが起きたから、Cが起きた」とピタゴラスイッチないしバトンリレーの要領でシーンを配置すれば良いのである。そのためには大なり小なり、プロットの作成方法も覚えなければならない。

オリジナリティを目指す


 誕生期にて得られた自己有能感(自分が優れているという感覚)は、収集期にて消耗されていく。代わりに劣等感が身体を動かすようになっていくが、自己有能感が完全になくなった作家志望は筆を折ることになる。ポジティブな創作活動を維持するためには、オリジナリティが必要不可欠である。

 小説を書き続けるには「なぜ小説を書くのか」という命題に、自分なりの回答が出来なくてはならない。小説よりも映画や漫画のほうが人気が出るのに――収集期を抜け出すには、その種となるものを不明瞭ながらも見つけ出し、育てていく必要がある。

鍛錬期 ―プロデビューへあと1歩の時期―


 最低限クオリティの小説を、創作出来た人に訪れる時期。

「そこそこ読まれるんだけど、プロになれない」という悩みを持ち始めるのが特徴。悩みが解消されずに脱落する人や、固定ファンがいることによって慢心する人が出始める「第二の闇」である。

 構成に気をつけたり、描写で狙った効果を出すことが課題になる。キャッチーさが養われていくため、鍛錬期を乗り越えられた人間は、商業作家として通用する実力を手に入れるようになる。

最初の掴み


 三幕構成や起承転結通りにシナリオを作れたとしても、人気の出る小説にはならない。起伏のないシーンがだらだらと続いていたら、読者は途中で読むのをやめる。それを阻止するには物語の推進力……つまり「つい読み進めちゃう要素」を意識する必要がある。

 序盤は謎と快感を散りばめて、読者が食いつきそうなエサを撒く。謎とは文字通りミステリーのことだが、快感とは「俺つえー」「ハーレム」などのあざとい演出のことを指す。中盤は障害を段階的に置いて、キャラクターを追い込むのが重要になってくる。

可愛い女の子を描く


 鍛錬期最大の課題となってくるのが、魅力的なキャラクターを作ることだ。特にライトノベル作家志望であるのなら、可愛いヒロインを書けるかどうかで、その後の作家人生が決まってくる。物語がつまらなくても、文章が汚くてもヒロインさえ可愛ければ売れるのだ。

 小説では、アニメ・漫画のように視覚的な女性表現は難しい。容姿端麗・胸が大きい・声質が良い等の特徴を並べるでは、読者を惹きつけられないからだ。仕草や言動によって、女性らしさを醸し出す必要がある。

描写による盛り上げ


 分かりやすい文章が書けるようになると、次は描写やレトリックによる雰囲気作りが大事になってくる。読者の感情・想像を煽れない文章では、ただの脚本だからだ。描写は映画におけるカメラワークの役割を持っている。作中の世界を様々な角度から「見せる」ことで、読者の脳裏に実体化されるのだ。ここは各々の文体センスが光るところである。

 文体センスを上げるには、描写やレトリック以外のことにも気を使う必要がある。書き出し・文と文の結び・文章のリズム等……極めようものなら果てしない。とにかく沢山の小説を読み、小説以外の文章にも触れ、映画や漫画を見る。実際に様々な経験をすることも大事であり、「文章とは人生経験の集大成である」と言っても過言ではない。時間をかけて養うものだ。

成熟期 ―日本中を動かす時期―


 技術が十分に身につき、自分にしか出来ない作品を創作できるようになる時期。

 ここまでくれば最早売れっ子作家となり、筆一本で食べていけるようになる。あとは、心に残るような芸術品を作るのが目標だ。職人としても、「でかいブームを起こして印税がっぽがぽ生活するぞ!」というビジネスとしても、より高品質かつオリジナリティの高い作品を作るのは、当然の考えだろう。

 正直に書くと、自分の力量では成熟期を的確に解説することは難しい。しかし、「何となく、これなんじゃないかな?」という話は出来るので、仮の段階ではあるが苦心してみた。

実在しているような世界


 いつまでも人々の記憶に残る小説は、得てして「あたかも、実在しているような世界」であることが多い。「あのキャラクターはどうなったのだろう」「物語の裏では何が起きていたのだろう」と読者たちに想像の余地を与え、考察に精を出させる。その特徴は二次創作されやすさに繋がり、多くの人々を動かす力となる。

 世界を作るのは、あくまで登場人物たちだ。設定資料はその手助けをしているに過ぎない。まるで生きていると思わせるような……ある種のリアリティを帯びたキャラクターを作るには、ひとりひとりにバックボーンをもたせる必要がある。「主人公はこういう家庭で生まれ、こういうふうに育ち、こういう考えを持っている」という物語上では映らない歴史を作れば、自ずと世界も魅力的になる。

文学性を磨く


 小説とは、人間関係および心理を描くものである。「心理を描くためには、対立と葛藤が大事だ」とはよく言われている。他人の葛藤は心の栄養になるからだ。古来より我々人間は、他人を知ることで自身の人生を豊かにしてきた。「人々の心を救う」というとエゴかもしれないが、文学として扱われる小説には、人を成長させる効果があるのは間違いない。

 ゆえに「全ての要素は心理描写のためにある」と言っても過言ではない。創作するうえで、ひとつひとつの要素に対し「これは登場人物の心理にどう影響してくるか」を考えるのは、初心者のうちから慣れておきたいところだ。登場人物の葛藤は、シンプルなものほど良い。ある部分で抽象性をまとっていると、人々はそこを都合よく自分に当てはめることが出来る。

発見・発明する


 開拓者の功績は、多くの人々を動かす。承認欲求が満たされるのは当然、「人に楽しんでもらいたい」というエンターテイナー気質であれば、自分のアイデアが文字通り世界を変える結果になったら、作家冥利に尽きるというものだろう。

 何かを発見・発明するには、知識の量が物を言う。映画・音楽といった他の芸術に触れることはもちろん、様々な学問や娯楽に精通していないと難しい。作家になりたいなら四六時中小説のことを考える勢いが大事だが、専業作家になれるレベルの実力があれば、あえて小説から遠ざかることも時として必要なのだ。

【まとめ】ワナビの一生は、重荷を負うて、遠き道を行くがごとし


 発達過程は、書き続けること、考え続けることで次のステップに上がる。時間を置かないと乗り越えられない壁もあるし、特定の課題に対しての得手不得手もある。時には「俺、三幕構成とかよくわかんないけど、なんか文学性のある小説書けるぜ」という人を見つけては歯を食いしばることもあるだろう。

 大事なのは、何度転んでも立ち上がる根性。それと、目標を見失わない姿勢だ。急いで走れば、周りの景色は見えなくなるし、思わぬところで転ぶ。カメのように慎重な足取りで歩き、基礎をしっかりと踏み固めていこう。



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